電気工事業の登録のやり方|申請手順・費用・必要書類を解説

結論から言うと、電気工事業を営むには電気工事業法に基づく「登録」か「届出」が必要で、建設業許可を持っていても別途手続きがいります。
この記事では、登録・みなし登録・通知の違い、主任電気工事士の要件、必要書類と手数料、申請から営業開始までの流れを、申請現場の感覚を交えて整理します。読み終えれば、自分がどの手続きをすべきか判断できるはずです。
書き手は行政書士の梶原です。電気工事業登録の支援を100件以上やってきました。差し戻された案件も見てきたので、つまずきやすい点は先回りで書きます。
電気工事業の登録とは?まず押さえる全体像

電気工事業を営むには、電気工事業法に基づく「登録」または「届出」が必要です。経済産業省の手引きでも、申請・届出として整理されています。
ここを誤解したまま工事を請けると、後で無登録営業を問われます。まずは制度の骨格を押さえてください。
登録・みなし登録・通知の違い
制度上の分類は4つあります。登録電気工事業者、通知電気工事業者、みなし登録電気工事業者、みなし通知電気工事業者です。
ざっくり言うと、扱う電気工作物の種類と、建設業許可の有無で枝分かれします。一般用電気工作物(一般家庭やコンビニなど)を扱うなら「登録」、自家用電気工作物だけなら「通知」が基本です。
そして建設業許可を持っている場合は、登録ではなく「みなし」の届出になります。許可があるから手続き不要、ではない点に注意してください。
| 区分 | 扱う電気工作物 | 建設業許可 | 手続き |
|---|---|---|---|
| 登録電気工事業者 | 一般用を含む | なし | 登録 |
| みなし登録電気工事業者 | 一般用を含む | あり | 届出 |
| 通知電気工事業者 | 自家用のみ | なし | 通知 |
| みなし通知電気工事業者 | 自家用のみ | あり | 届出 |
自分がどの手続きに該当するかの判定フロー
迷ったら、次の3つを順番に自問してください。
①一般用電気工作物(一般家庭などの低圧の工事)を扱うか。②建設業許可(電気工事業など)を持っているか。③営業所は1つの都道府県内だけか、複数県にまたがるか。
①がイエスで②がノーなら「登録」。①がイエスで②がイエスなら「みなし登録の届出」。自家用だけなら「通知」または「みなし通知」です。
正直、ここで判断を誤る人が一番多い。自分のケースが微妙だと感じたら、申請窓口に区分を確認してから書類を作るほうが早いです。
建設業許可との関係と違い
建設業法に基づく許可を受けていても、電気工事業を営むときは別途、都道府県知事または経済産業大臣への手続きが必要です。経済産業省の手引きで明記されています。
建設業許可は「請負金額の大きい工事を請けられる」ための許可。電気工事業の登録・届出は「電気工事を安全に施工する体制があるか」を見る制度で、目的が違います。
許可を取った安心感で届出を忘れる事業者を、私は何度も見てきました。許可と届出はセットで考えてください。
業種別(建設業・リフォーム業など)の登録要否
リフォーム業でコンセント増設や照明配線を自社施工するなら、登録が必要です。一般用電気工作物の工事に当たるからです。
一方、電気工事はすべて電気工事業者に外注し、自社では一切手を下さない——という運用なら、登録は不要なケースもあります。
ここは「自社の従業員が実際に電気工事の作業をするか」で線を引くと判断しやすいです。図面だけ、手配だけなら不要、現場で配線を触るなら必要、と覚えてください。
登録の要件と主任電気工事士の設置
登録の最大の関門が、営業所ごとの主任電気工事士の設置です。これを満たせないと、書類が整っていても登録できません。

東京都向けの案内でも、登録要件として営業所ごとの主任電気工事士設置と、各種書類の提出が示されています。
主任電気工事士に必要な資格と実務経験のパターン
主任電気工事士になれるのは、第一種電気工事士免状を持つ人か、第二種電気工事士免状を持ち一定の実務経験がある人です。
つまり第二種だけの場合、免状を取ってすぐには主任電気工事士になれません。実務経験が要ります。
| 保有資格 | 実務経験の要否 | 主任電気工事士 |
|---|---|---|
| 第一種電気工事士 | 不要 | なれる |
| 第二種電気工事士 | 一定の実務経験が必要 | 経験を満たせばなれる |
| 第二種電気工事士(実務経験なし) | ー | なれない |
第一種電気工事士で実務経験が不要になるケース
第一種電気工事士免状を持っている人を主任電気工事士に充てる場合、実務経験の証明はいりません。
これが手続き上いちばんラクなパターンです。社内に第一種の有資格者がいれば、実務経験証明書をかき集める手間が丸ごと消えます。
私が支援するときも、第一種の方がいれば真っ先にその人を主任にできないか確認します。証明書の準備が要らない分、差し戻しリスクが下がるからです。
個人事業主と法人での申請内容の違い
提出書類が一部変わります。法人は登記簿謄本(登記事項証明書)、個人事業主は住民票で本人や事業者の確認をします。
事業主本人が第二種電気工事士で主任を兼ねる個人事業主は珍しくありません。その場合も実務経験の証明は必要です。
申請書の記載欄も、代表者欄・役員欄の書き方が法人と個人で異なります。様式の記載例を見ながら埋めると間違いが減ります。
複数都道府県にまたがる場合の経済産業大臣登録
営業所が1つの都道府県内だけなら都道府県知事への登録、複数の都道府県にまたがるなら経済産業大臣への登録です。
ここでいう「営業所」は、本店だけでなく支店や営業拠点も含みます。県外に営業所を1つ出した瞬間、登録先が大臣に切り替わると考えてください。
将来の県外展開が見えているなら、最初から登録先を意識しておくと、後の変更手続きが減ります。
登録にかかる費用と所要期間の目安
費用は登録手数料が中心です。手数料の正確な金額は、申請先の都道府県や経済産業局の最新の公表額で確認してください。この検索結果には確定額が含まれていません。

ここでは費用の「内訳の考え方」と、申請から営業開始までの流れの目安を示します。
登録手数料と総額シミュレーション
総額は大きく3つに分かれます。登録手数料、添付書類の取得費(登記簿謄本や住民票など)、そして自分でやるか専門家に頼むかで変わる人件費・報酬です。
登記簿謄本や住民票の取得は数百円程度の実費。手数料は申請先で確認、というのが正直なところです。確定していない金額をここで書くつもりはありません。
| 費目 | 内容 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 登録手数料 | 登録申請時に納付 | 申請先で要確認 |
| 添付書類取得費 | 登記簿謄本・住民票など | 各数百円程度の実費 |
| 専門家報酬 | 行政書士に依頼する場合 | 依頼先により幅がある |
登録から営業開始までの標準スケジュール
流れはシンプルです。①要件確認(主任電気工事士を誰にするか決める)②書類収集③申請書作成④提出⑤審査⑥登録通知の受領。
私の実感では、書類が揃っていれば作成から提出まで1〜2週間、そこから審査を経て登録通知が届くまでがもう少し、というのが多い。具体的な審査日数は申請先で確認してください。
いちばん時間を食うのは実務経験証明書の取得です。過去の勤務先に証明をお願いする工程は相手の都合次第なので、早めに動くのが鉄則です。
自分で申請する場合と行政書士へ依頼する場合の比較
自分でやるメリットは報酬がかからないこと。デメリットは差し戻しのリスクと、書類集めの時間です。
正直に言うと、第一種の有資格者が社内にいて書類が揃いやすいケースなら、自分で十分やれます。逆に第二種で実務経験証明が複雑な人や、県外展開で大臣登録に絡む人は、専門家に任せたほうが結果的に早いことが多い。
| 観点 | 自分で申請 | 行政書士に依頼 |
|---|---|---|
| 費用 | 手数料・実費のみ | 別途報酬がかかる |
| 手間 | 書類収集・作成を自分で行う | 代行してもらえる |
| 差し戻しリスク | 記載ミスが起きやすい | 事前チェックで下げられる |
| 向いている人 | 第一種で書類が揃う人 | 証明が複雑・県外展開する人 |
電気工事業の登録申請の手順【番号付きガイド】

所要時間は書類が揃っていれば作成自体は半日〜1日。難易度は、第一種の有資格者がいれば「やさしい」、第二種で実務経験証明が必要だと「ふつう」です。
前提として、主任電気工事士を誰にするかを先に決めておくこと。ここが固まらないと書類が作れません。
必要書類チェックリスト
東京都向けの案内で挙げられている書類を、チェックリストにしました。申請先で項目が一部異なることがあるので、最終確認は窓口の最新様式で。
| 書類 | 内容 | 確認の目安 |
|---|---|---|
| 登録申請書 | 所定様式に記入 | 記載漏れがないこと |
| 誓約書 | 欠格事由に該当しない旨 | 署名・押印を確認 |
| 主任電気工事士の免状写し | 第一種または第二種 | 氏名・番号が鮮明 |
| 雇用証明書 | 主任電気工事士の雇用関係 | 主任が在籍する証明 |
| 実務経験証明書 | 第二種の場合に必要 | 期間・内容が要件を満たす |
| 登記簿謄本または住民票 | 法人は謄本、個人は住民票 | 発行から有効期間内 |
申請書の書き方と記載例
申請書は、申請者情報・営業所・主任電気工事士・備付器具などを記入します。
記載のコツは、添付書類と記載内容を完全に一致させること。免状写しの氏名・番号と申請書の記入が1文字でもずれると、確認の手間が増えます。
各申請先は記載例(記入見本)を配布しています。新規・更新・変更・廃止で様式が分かれているので、自分の手続きに対応する記載例を見ながら埋めてください。
郵送・メール・電子申請の提出方法と申請窓口
電気工事業法の申請・届出は、経済産業省の案内上、24時間365日オンラインで可能です。
提出方法は、オンラインのほか、申請先によって郵送やメール、窓口持参も選べます。東京都内の場合は、業法登録の事務所(築地・立川)や都の環境局の窓口が案内されています。
私の経験では、初めての人ほど一度は窓口やメールで担当者に確認しながら進めると、差し戻しが減ります。オンラインは慣れてからでも遅くありません。
つまずきやすい差し戻し事例と対策
差し戻しの定番は3つ。実務経験証明書の不備、免状写しと申請書の記載不一致、誓約書の押印漏れです。
特に多いのが実務経験証明。期間が要件に届いていない、証明者が適切でない、というパターン。提出前に「期間」と「証明者」を二重チェックしてください。
うまくいかないときは、自己流で出し直すより、窓口に「どこが足りないか」を具体的に聞くのが近道です。電話の対応時間内に確認するのが確実です。
この手順どおりに書類を整え、提出して登録通知を受け取れば、電気工事業の登録は完了です。
登録後に守るべき義務と更新・変更・廃止の手続き
登録は取って終わりではありません。登録電気工事業者には、業務上の義務と、有効期間の管理が課されます。

登録有効期間は5年。継続して営むなら更新が必要です。
標識掲示・帳簿備付け・器具備付けの実務
登録電気工事業者には、事業の規制として標識の掲示、帳簿の備付け、必要な器具の備付けが求められます。
標識は営業所と現場の見やすい場所に。帳簿は施工内容を記録し、一定期間保存します。器具は絶縁抵抗計や接地抵抗計など、検査に使うものを備えます。
立入検査でここを見られることがあります。登録後すぐに標識を掲げ、帳簿の様式を用意しておくと慌てません。
更新(有効期間5年)と更新忘れによる失効リスク
登録の有効期間は5年です。更新手続きをしないと登録は失効し、その時点から無登録状態になります。
失効に気づかず工事を続けると、無登録営業として罰則の対象になりかねません。これがいちばん怖い。
私は支援先には、登録通知の有効期限をカレンダーに入れ、期限の数か月前にリマインドする運用を勧めています。5年は長く、人は忘れます。
変更届・廃止届の提出期限と遅延時の対応
営業所の所在地、主任電気工事士、代表者などに変更があれば変更届を、事業をやめるなら廃止届を出します。
提出期限は手続きごとに定められています。具体的な日数は申請先の最新案内で確認してください。
遅れたら、放置せず速やかに届け出ること。特に主任電気工事士が退職したのに後任を置かないまま放置すると、登録要件を欠く状態になります。
無登録営業や違反時の罰則・行政処分の具体例
電気工事業法には罰則があります。知らなかった、では済みません。

無登録営業の罰則
無登録で電気工事業を営んだ場合の罰則は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金、またはその併科です。
建設業許可を持っているのに電気工事業の届出を忘れていた、というケースでも無登録状態は起こり得ます。許可と届出は別物だと、もう一度強調しておきます。
業務規制違反のよくあるケース
主任電気工事士を置かないまま営業を続ける、標識を掲示していない、帳簿を備えていない——こうした業務規制違反も処分の対象になります。
主任電気工事士の退職後、後任を立てずに営業を続けるのは特に危ない。要件を欠いた状態だからです。退職が決まったら、その時点で後任の手当てを始めてください。
よくある質問(費用・始め方・用語の解説)

相談現場で実際によく聞かれる質問に答えます。
よくある質問
最後に一言。電気工事業の登録は、要件さえ整理できれば決して難しい手続きではありません。つまずくのはたいてい「自分がどの区分か分からないまま書類を作り始める」ところです。まず区分を確定させる——そこから始めてください。
